製薬会社は楽して儲けているのか?
キムリアという画期的な白血病の新薬に1回3349万円の価格がついて、保険適用されたことがニュースになりました。
こうした話題が出ると「薬1つで3349万なんて、製薬会社は楽してボロ儲けしてるな〜」と思う方もいらっしゃると思います。
果たして、これは本当でしょうか?
薬の開発には長い年月と多額の開発費がかかる
たった1つの薬を開発するのに10年の期間と約2000億円が必要だと言われています。
家電やコンピュータ、スマホなどが1、2年で次々と発売されていることと比較すると、10年という開発期間は非常に長いです。
日本の大手製薬会社が一年で使う開発費は3500億円だそうです。
細胞レベル、動物レベルそして人体で、重い副作用がなく、その病気に効果を発揮することを科学的に証明するために、これだけの期間とお金かけて数多くの試験が行われます。
しかも、こうして開発した薬の全てが発売されるわけではありません。
開発の途中で重い副作用があることがわかって、開発が中止されることも頻繁にあります。
そうすると、例えば開発期間の半分、5年をかけて1000億円を使ったとしても、開発中止になればそのすべてが無駄になるわけです。
そう考えると製薬は数々の業界の中でも非常にリスクの大きなビジネスだと言えます。
投資した開発費は薬の売り上げで回収するしかないのに…
製薬会社が多額の開発費を投入して、たった1つの薬を発売できたとして、その薬の開発費だけでなく、開発が中止された製品の開発費も回収しなければなりません。
薬の開発では、ほぼ同じ時期に類似のメカニズムの製品がいくつかの製薬会社で開発されることが多いです。
類似した商品の中で、一番に市場に出た製品がその市場の大半を占める事になるので、どの会社も1日でも早く厚生労働省に承認されるようにと、開発競争が起きます。
結果、2番手、3番手と出遅れた会社は、元々の開発費すら回収できないこともあります。
こうして、長い年月をかけて多額の投資をしてもそれを回収できないというリスクもあるわけです。
こうして見てみると、新薬が発売されたことや、その金額がメディアで大きく報じられ、「製薬会社は儲けてるな」と感じますが、数多くのリスクと、失敗の繰り返しの先に、たった1つ薬の発売があり、患者さんたちに貢献することができ、かつ利益を得ることができるわけです。
こうした企業の在り方は、私たちのマインドにも通じるように思います。
リスクを回避して、当たり障りのない成果を出していても個人の成長はありません。
自分に投資をし、あえてリスクを取ることで、自ら成長し変化し続けることができます。