小学校でデバイスを使わずにプログラミング教育は可能なのか?
東京都教職員研修センター紀要 第18号の中で、「児童の情報活用能力の育成 – 小学校段階におけるプログラミング教育の推進を通して -」という研究結果が公表されています。
この中で、都内の4校のプログラミング教育事例が示されています。
- 総合的な学習の時間 「地域の安全について考えよう」
- 音楽 「ひょうしをかんじてリズムをうとう」 第2学年
- 算数 「三角形と四角形」 第2学年
- 算数 「体積」 第5学年
- 社会 「店で働く人と仕事」 第3学年
驚いたことに、これら全ての事例でPCやタブレットといったデバイスを使っていませんでした。
例えば、「地域の安全について考えよう」では、プログラミングというより、プロジェクトの進捗管理方法について学んだようです。
また、「店で働く人と仕事」では、KJ法というふせんを使った情報の整理術を勉強したようです。
学校ごとに設備や予算、先生のスキルに制限があるのは理解できます。
しかし、事例として示されていた方法はどれも非常に遠回りで、本当にプログラミング的思考を身につけられるかいささか疑問に思います。
海外でもこうした方法でプログラミング教育を行っているのでしょうか?
海外のプログラミング教育
2016年に、micro:bit財団とBBCはmicro:bitという子供たちの教育用のシングルボードコンピュータを開発しました。
このシングルボードコンピュータは、日本では2,160円で販売されており、スマホ、タブレット、PC等と組み合わせることで比較的安価にプログラミングの学習が可能です。
各国でのmicro:bitの教育効果の報告をご紹介します。
イギリス(2017年)
2016年にイギリスの11-12歳の全ての子供たち100万人にmicro:bitが無料配布されました。
授業の中でmocro:bitを使用した感想を集計した結果以下のことがわかりました。
- 86%の生徒が、micro:bitはコンピュータサイエンスをもっと面白くしてくれたと述べました。
- 70%の女子が、micro:bitを使用した後に学校でコンピュータ科目を間違いなく選択するだろうと述べました。
- 85%の教師が、生徒にとってICT/コンピュータサイエンスがもっと楽しいものになったことに同意しています。
デンマーク(2019年)
デンマークにある小学校約1,600校のうち1,447校がmicro:bitを使ったコンピュータサイエンス教育のプロジェクトに参加し、64,000人の子供たちにmicro:bitが配布されました。
これは、デンマークの国家プロジェクトとして実施されました。
参加した小学校4年生の73%がプログラミングの経験がありませんでしたが、授業の中でmocro:bitを使用した感想を集計した結果以下のことがわかりました。
- 86%の子供が、この先もプログラミングを勉強したいと回答しました。
- 90%の教師が、micro:bitで作業してからプログラムしやすくなったと感じました。
こうした調査結果を見てみると、子供たちの適応力の高さがうかがえます。
概念や考え方を座学で教えるよりも、まずデバイスを与えてみて、子供たちの創造性に任せるというのがプログラミング教育の近道であることがわかります。
なお、micro:bitは世界50カ国、200万台以上が子供たちのプログラミング教育に活用されています。
シンガポールの授業風景
香港、シンガポール、ウルグアイ、インド、バングラデシュ、南アフリカ等々、日本人の感覚からすると、少し教育が遅れてるイメージを持っている国々でも、すでにmicro:bitのような安価で手軽にプログラミングができるデバイスを使って実践的なプログラミング教育が実施されています。
本講座はmicro:bitを使った授業づくりをするための技術面だけではなく、先生方の意識や子供たちへどう印象づけるかについても学んでいただける講座です。
小学校の先生に限らず、ぜひご参加くださいませ。
STEAM Tokyoでは、学生のための次世代プログラミング教育を行っています。
近々、体験会を開催予定です。
体験会の詳細は追ってこのブログで告知させていただきます。